Skip navigation.
りらいぶジャーナル

健康維持は食べ物が基本です

穀類、野菜中心に正しい食生活を
――薬方堂・佐藤成志さんに聞く、病気にならない体づくり

 好き嫌いなく何でも食べる。一見健康の秘訣と思われがちだが、実は間違いだと指摘する佐藤成志氏。薬剤師として食事指導や漢方処方を行う佐藤氏に食と健康について聞いた。

 私のもとにはがんを始めアトピー、ぜんそく、糖尿病、膠原病、心臓病などを患い、病院にも見放されたという患者さんがたくさんご相談にいらっしゃいます。

 大腸がんを患ったある男性は「術後、抗がん剤を使わなければ100%再発する」と言われていたのに、ご自身の意思で抗がん剤治療を拒否しました。実はその方は医師で、それまで患者さんのがん治療に抗がん剤を使っていたのですが、それでは治らないということを知っていたのです。その自分ががんになってから私のことを知り、指導を受けに来られました。その結果、完治したのです。15年経ったいまでも元気に診療を行っています。そのほかの患者さんも同じように元気になられています。

 私は医者ではありません。ではなぜ、医者にもさじを投げられた方々が健康を取り戻しているのでしょうか。

食生活を見直す

 私が大事にしていることは普段の食べ物です。穀類を主食、野菜を副食とする「穀菜食」によって病気に負けない体づくりを勧めています。なぜなら、命をつくっているのは食べ物と水だからです。健康な体をつくるには食べ物と水がカギを握っているのです。

 よく「好き嫌いなく、何でも食べなさい」と言いますが、それは「何も知らない」ということに等しいと私は思います。「何でも」ではなく、よいものと悪いものとを見極めて食べなければなりません。

 現代の病気のほとんどは生活習慣病です。昭和初期までは結核や赤痢など細菌感染による病気が目立っていました。しかし、いまではがん、心臓病、脳卒中、そして増加している糖尿病、アレルギー性疾患といった、生活習慣、特に食習慣によってつくられた体質が原因となって引き起こされた病気がほとんどです。

 このような病気に対して西洋医学ができることは薬を使うことと手術をすること、そして放射線治療など化学療法を施すことです。それは病気を克服するうえで必要なことですが、根本療法にはなりません。肝心な食物のことには触れられていないのです。例えばがんの手術をして治療が終わった途端、「何でも食べてください」と言われるわけです。

 この生活習慣病を治すには食生活を見直す必要があります。食べ物によって「血」や「肉」といった「体」がつくられるのです。病気にならない体質をつくる、つまり自然治癒力を高めるには普段の食べ物が重要なのです。

骨にはミネラル

 ここで牛乳についても触れておきます。牛乳はよく「骨が丈夫になる」と子どものころから飲まされ、また「骨粗しょう症の予防に」と勧められていますが、では本当に骨が丈夫になったのでしょうか。実際には子どもの複雑骨折が増えたり、骨折が回復するのに時間がかかったりしているのが現状です。牛乳と人間の乳とでは違いがあるのですから、これはごく当たり前のことなのです。

 牛の寿命は生理学的に30年、人は120年といわれます。牛は生まれてすぐ立ち上がりますが、人は寿命の長い分、生まれて歩き始めるまで約1年もの時間がかかります。孔牛は成長を早めるため、100g当たり100mgという大量のカルシウムを含んだ乳を摂取します。これは人の乳の4倍です。それゆえに人間の骨も丈夫になるといわれるのです。けれども牛の骨はカルシウムが中心で見た目は太いのですが、中身は多孔性の構造をしています。耐用年数が30年であればこれで十分です。例えていうなら軽量鉄骨構造です。

 一方、人間の骨の成分はカルシウムだけではありません。マグネシウムやリン、ナトリウムなど多種類のミネラルが必要で、それらがバランスよく含まれることで120年の耐用年数を持つ丈夫な骨がつくられるのです。ですから、骨を丈夫にするには牛乳ではなくミネラルが豊富な豆乳、そして海藻類をお勧めします。

五穀を主食に

 さて、食べ物を考えるときのポイントのひとつに食性があります。絶対的とはいえませんが、たとえば牛は牧草を食べて成長します。パンダのそれは笹です。コアラはユーカリです。では人間、なかでも私たち日本人はどうでしょう。

 そもそもは日本人は農耕民族であり、穀物と野菜を食してきました。一方、欧米人の多くは狩猟民族ですから肉です。同じ人間ですが、食文化の違いで肉体的な違いが生じます。顕著なのが腸の長さで、日本人のほうが長いのです。そのことを忘れてはいないでしょうか。厚生労働省が行った調査からも日本人の食事が高タンパク、高カロリーになるにつれ、がんや高血圧、糖尿病、脳卒中が増えていったことがわかります。つまり、日本の食性からどんどん離れていったことに気づくべきです。

 仏教用語で「身土不二(しんどふに)」という言葉があります。体と土は一体であり、地元の土地で採れたものが一番体によいという考え方です。これにしたがうなら、日本人には日本で採れる穀物と野菜がよいのです。

 昔から「五穀豊穣」という言葉があるように、日本は穀物に恵まれた国です。その五穀とは米・麦・あわ・ひえ・きびのこと。これにそばと豆を加えた穀物を主食とすれば、それだけで栄養が取れ、生きていくことができます。しかもおいしいのです。私も40年間食べ続けています。

 ただし、米は未精白のもの、つまり玄米にすること。どうしてもなじめなければ2分または3分づきにします。この米6割に麦やあわなどの穀類を4割加えていただきます。そうすれば、それぞれが栄養を補完し合って完ぺきな主食となるのです。

 そして副食として野菜、海藻、とうふ・納豆、小魚・貝類、漬物、梅干などを取ります。こうした食べ物は無農薬、有機栽培のものを選びます。

 さらに健康的な生活に必要なのは葉緑素と酵素、そして胚芽です。
 実は赤血球のヘモグロビンのヘムという物質と葉緑素とは構造がそっくりなのです。そして葉緑素は血液をきれいにする浄化作用のほか、殺菌力や消炎力を持ち、さらに造血作用もあります。血液が汚れると病気になります。つまり葉緑素を体に取り込んでいれば、病気を防ぐことができ、自身の自然治癒力を高めることができます。

 それから胚芽。胚芽にはほとんどのビタミン類、ミネラル類が含まれているため、自然な栄養の宝庫といえます。

 そして酵素。食べ物を分解し消化を助ける消化酵素のように、体内のあらゆる反応を助ける役割をする物質です。酵素が不足することによっても病気になります。

 もし肉食や脂質の多い食事をしたとしても、以上のような基本の食生活に戻すことによって毒素を体外に排出させることができます。また早めにそうさせることが必要です。

 最後に薬草の力を借りること。化学合成品ではなく、古来から使われてきた薬草を使います。ただし対症療法的な用い方ではなく、その人の証(病の状態や体質)に合った処方をします。

すべてに感謝を

 このように食を基本とした見直しはいまからでも遅くはありません。まずは食生活を基本とし、気持ちのよい適度な運動をすること、ストレスを溜めないことが年を取ってからも重要です。私が食事指導を行ったある介護施設では、穀菜食によって徘徊がなくなったと聞いています。また認知症もかなり防ぐことができます。

 もうひとつ大事なことは健康であることへの感謝の心です。食べることができるという感謝の気持ちです。そして生きていることへの感謝の気持ちです。日ごろからそうした心で過ごすことができれば、ストレスを感じることはありません。その訓練が大切です。さらに環境に対する関心を持つことです。

 これら「食・心・動・環」を目指して、心身ともに健康を維持していきましょう。

●さとうせいし
1934年宮城県生まれ。薬剤師。東北薬科大学卒業後、森下敬一博士のお茶の水クリニックで慢性病患者の食事改善を指導、88年漢方薬局・薬方堂設立、現在に至る。著書に『穀菜食で病気にならない体をつくる』(廣済堂・健康人新書)ほか多数。

『穀菜食で病気にならない体をつくる』佐藤成志著(廣済堂健康人新書)840円