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りらいぶジャーナル

伝統的な“腹”の文化を再認識――世界チャンピオン育てた「体幹チューニング」

体幹チューニング本部代表 須田達史さん

 10代から格闘技で強くなるために、ありとあらゆるトレーニングをやりました。根性論で「人の2倍、3倍やれば強くなる」という意識でした。結果としてキックボクシングでは、日本チャンピオンになりましたが、海外で対戦するとまったく通用しないんです。タイで本場のムエタイの選手と対戦したとき、子ども扱いでした。死ぬほど努力したのに、大変なショックでした。「これは単に努力や練習量の差ではない」と思ったんです。


 ところが帰国して、後楽園ホールである試合を見ていたら、今度はオランダの選手がムエタイの選手をころころ転がしてやっつけてしまっていました。パワーの差もありますが、なぜ私が子ども扱いされたムエタイの選手が倒されるのかと疑問に思い、今度はアムステルダムに行きました。

 私は毎日12時間くらい練習していましたが、オランダの選手は1時間、しかも週3回しか練習しないんです。そんな選手が、ぼくが子ども扱いされたタイ人をバンバン倒していくんですよ。何なんだこれは、あの努力は何だったんだと思いました。

 オランダで体を壊して帰国してから、いろいろなことを考え始めました。これは体の使い方や意識の持ち方が違うんだと。また、民族や文化の違う他国の方法を日本にそのまま持ち込んでも効果は少ないとも思いました。日本人に最も適した体の使い方やトレーニング方法は何だろうと注目したのが、戦前の日本で流行したある健康法だったんです。

 その特長はいわゆる「丹田呼吸」に合わせて、体の軸をぶれさせないように行う身体操作法にあります。現代では知る人ぞ知る健康法になっていますが、私はこれを20年間実践し、自分の体でその良さを実感することができました。これまで15年間におよぶトレーナーとしての経験と、空手やキックの世界チャンピオンを育ててきた実績をもとに、今の時代に合った、一般の人にもわかりやすく短時間で効果が現われる健康法として開発したものが「体幹チューニング」です。

 その基本は腹式呼吸にあります。体幹チューニングを行えば、腹の中心を深く意識できるようになります。全身の血行が良くなり、回復力を高めます。
 例えば膝や肩や腰を痛めているときに、病院などでその部分だけ治療をするよりも、まず体幹チューニングを行ってから治療すると、もっと効果が上がります。
 これは寝たままでもできますから、高齢者でも無理なく行えます。私のセミナーには実際に八十歳代の方も参加されていました。

 丹田呼吸を繰り返すと精神的にも安定します。子どもたち、特にキレる若者の精神安定にも効果があります。私はあらゆる世代に対する国民健康法になるように普及させていきたいですね。

 日本人には「腹(ハラ)」の文化があります。「腹を決める」「腹を割って話す」、そういう言葉が自然に理解できます。昔は着物で帯を巻いていましたし、お祭りのときにはさらしを巻いていました。腹を固定していましたね。それが洋服になってから体の使い方が崩れてきて、それに伴って精神的なものも崩れてきたと思うんです。

 本来あるべき日本人の姿に戻す。姿勢をきちんとして、腹が決まって、礼儀正しくて、人を裏切らない、日本の伝統的な文化の素晴らしさを体幹チューニングによって再認識してもらいたいですね。
(2008.11.01)