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りらいぶジャーナル

『やぶれがさ―「ティータイム」と共に』

田中勢津著(日本文学館)1050円

 東北で生まれ育った普通の主婦が夫の赴任先である八戸で、子どもたちが生活に慣れるまでの憧憬を当時の河北新報にエッセイとして寄稿した。

 今から30年前、著者がまだ40歳前のことだ。平凡な家庭でもさまざまな人間模様やドラマがあるものだ、と思わずにいられない。それほど著者は素直に繊細に、さらに優しさを持って、何気ない日常を洞察している。本題「やぶれがさ」はひっそりと目立たない可愛らしい山野草だが、気取らない文章から伝わる情感に、著者の人柄とこの”花“のような存在感がにじみ出ている。