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りらいぶジャーナル

詩集 男の告白

夢久著(個人書店)私家版

 伊勢、志摩、名古屋、奈良、果ては沖縄、北海道――。ぶらり男一人旅が多いが、ときに妻や孫の姿が詩に描かれる。

 そもそも定年間際の著者が味わった会社に対する複雑な思いと鬱憤(うっぷん)を晴らすためにふらりと訪れた鳥羽で、夕日に向かって思い付いた言葉を並べたことが安らぎをつかんだ瞬間であり、詩を詠むきっかけとなったという。

 貧乏のどん底に落とした亡父、母子家庭で生活保護を受けながらの生活、母親の希望通りに大企業に就職しながらも50代後半で挫折感を味わった会社人生。詩の背景には著者の人生がぴったりと張り付いている。しかし、穏やかな雰囲気をかもしだしているのは残りの人生をいかに生きるか、著者なりの決断があるからだろう。