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りらいぶジャーナル

モンスターコンシューマー

■言わせてもらおう 私の提言 -井口恒夫-

 「あたし、添加物でアレルギー起こすの。無添加のもの教えて」。パン・洋菓子店での女性客のお言葉である。パンには膨張剤が入っているし、お菓子には香料入りもある。
 「あたし、香料は大丈夫なの」
 何だ、最初言ったことと違うじゃないか。
 「あのねえ、香料なんかもね、名前ちゃんと全部表示すればいいのよ」

 本気かね。第一に香料と一口に言っても、その数は500物質以上もあり、仮に10物質を混ぜ合わせたら10もの名称を書くことになる。第二に香料名の「アカヤジオウ、オポポナックス、カサボケ、サルシファイ、センキュウ、ディアタング――」とは何なのか、わかるんですかねー。

 さらには香料以外の一活名表示の添加物も加わり、全添加物表示の必要性は意味がない。食品添加物数は総数約1500品目のうち、いわゆる天然添加物はおよそ80%で、小麦や大豆に含まれるグルタミン酸もそうである。するとこの女性客は小麦や大豆原料の普通のパンやしょう油、豆腐なんかも食べられず、霞か雲で生きているのだろうか。

 「モンスターペアレント」と呼ばれる親たちがいる。専門家によると、その多くは自分の人生をすごく悔いていたり、どうしてこんなに不幸なんだと毎日嘆き怒っているので、これら蓄積を検討違いもはなはだしいが、怒りやすい相手の先生という格好のターゲットに向けているという。

 パン・洋菓子店でのこのご来客に限らず、近年の消費者方には日ごろからの不満等のはけ口に、教員、駅員、店員といった抵抗しにくい人たちを勝手な言動やうっぷん晴らしの対象にする「モンスターコンシューマー」たちが多い。彼らはスーパーなどで試食して歩く(まず買わない)のはまだしも、ジュースの試飲をする(そして持参のポットに入れさせる)、酒の試飲をする(10杯続けて飲んだりする)、盛り付けてある商品(栗甘納豆)を取って食べる(あら、試食しちゃいけないの?)、パンの試食をする(手いっぱいにつかんでポケットに入れる)などなど、真に卑しい様を見せる。

 「消費者は神様です」などとモンスター化を増加・増長させた経営者がいたが、神様は弱者を救いこそすれ、困らせるような目には合わせないはずなんだが。

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【井口恒夫】退職後に10代の若者たちに混じり、専門学校で調理師免許取得。食品衛生の仕事に携わりながら、地元町内会の副会長としても活躍中