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りらいぶジャーナル

演劇で変わる人生

久保田宏明さん
中村利一さん
(文学座プラチナクラス第1期生)

 「日本の心を表わすのは芝居しかない」――。そんな熱意を持って早稲田大学で演劇論を勉強したという久保田宏明さん(84)。それ以降、演劇とは離れたが、83歳にして文学座プラチナクラスに入所、第1期生として演技指導を受けた。新聞でプラチナクラスを知ったとき、「うちの奥さんから『やりたいんでしょ』といわれたんですね。もともと芝居が好きだから、よしやろうと決めました」

 入所して印象深かったのはゲームをしながらコミュニケーションの取り方を体得したこと。久保田さんは教育行政や事業に携わってきたため、「これこそ子どもたちに体験してほしいことだ」と感じたという。

 卒業発表会では詐欺師役を務めた。「とにかくそのままやってくれればいい、それが面白いし、見ている人がびっくりすると先生からいわれましてね。本当はもっと厳しく指導してほしかったですが」と笑う。半年のレッスンを通し「何でも一生懸命になることは素晴らしい。まだまだ私もやらなくてはいかん、とみなさんから励まされましたよ」

 同じく1期生の中村利一さん(44)は同期で最年少。中村さんは父親の死を機に会社員を辞め家業を継いだ。会社が落ち着いたころ、たまたま求人サイトで見つけたCMモデルに「面白そう」と応募して受かってしまった。「ただ、オーディションではカメラの前で演技しろ、といわれましたが、何もできません。それで演劇教室に行きたいと思っていたところ、プラチナクラスを知って迷わず応募したんです」

 そして入所後、やはり中村さんも「ゲームが楽しかった」と振り返る。「あれで緊張がほぐれましたね。レッスン後、毎回みんなで飲み会に行くようになりました。辛いこともあったけど、みんながんばった、乾杯!というのが気持ちよかった」

 卒業発表会では二役を演じた。「毎日、役のことで頭がいっぱい。でも本番で一瞬頭が真っ白になりました」と明かす。
 「40過ぎて演劇の世界に入るなどとは夢にも思いませんでした。苦しいこともあったけれど、それを乗り越えてきたので、機会があったらまた挑戦したい」という中村さんは、同期と11月に公演の予定が決まっている。
(2010.05.24)