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りらいぶジャーナル

気づきの大切さ伝えるサービス介助士 ――ケアフィットの理念、世界へ発信

NPO法人日本ケアフィットサービス協会理事長 畑中 稔さん

 駅、空港、ホテル、百貨店、銀行などあらゆる公共の場で「サービス介助士(ケアフィッター)」が高齢者や体の不自由な人への接客を行っている。現在6万人を超える有資格者を輩出しているNPO法人日本ケアフィットサービス協会理事長の畑中稔さんは「ケアフィット」という概念を福祉だけでなくコミュニティビジネスや教育に生かし、世界に広げたいと夢を語った。


 これから高齢者がますます増えていきますが、ほとんどは元気な高齢者です。その方たちが多少体が不自由でも要介護にはならず、元気に街に出て活躍するために私たちは何を提供すべきかを考え、市場調査しました。つまり、介護士は必要ないけれども、例えば駅で車いすを押す、目の不自由な方の歩行を助けるといったようなことは日常あるわけです。

 ところが、百貨店の介護用品売り場のスタッフが高齢者に対する知識をほとんど持っていないというようなことがわかったのです。そこで、おもてなしの心と確かな介助の技術を兼ね備えた人材教育に徹底しようと考えました。そうしなければ、今後の高齢社会を支え切れなくなってしまうからです。そこで誕生したのがサービス介助士です。

 一方で、ジェロントロジー(創齢学)という学問があります。エイジングを含め、人生のあり方を学際的、職際的、国際的に研究し、明るい高齢社会を創造することをめざす学問です。ジェロントロジーの研究をさらに進めようと、世界25大学の教授とネットワークを作り、2004年から毎年、ジェロントロジー国際総合会議を主催しています。今年3月にはインド・アンドラ大学で開催しました。

 ケアフィッターで大事なのは「気づき」です。ホスピタリティあふれる行為の前提として、他者をして自分自身に「気づく」ことが必要とされます。これは高齢社会の真っ只中にある日本がこれから世界へと発信できることではないかと思います。国際会議にはジェロントロジーや気づきを発信する意味があるのです。

 昨年4月、アメリカ・ユタ州のジョン・M・ハンツマン・ジュニア知事はすべての行政・企業にインターネット上でのケアフィット教育を義務付けました。台湾でも安心福務介助士資格制度を実施しています。また、急速に高齢化が進む中国でも、雲南省昆明市の行政・企業と共に福祉政策の整備を進め、ケアフィットの理念を取り入れたモデルケースを作っていきます。

 国内では、行政機関にサービス介助士は国民のためのサービスと考えていただけるようになり、多くの自治体で職員に介助士資格を取るよう勧めています。民間企業でも約650社で導入されています。有資格者は6万人を超えましたが、3年後には10万人に達するとみられます。

 今後はサービス介助士として企業で働いてきた人たちが退職しますので、彼らに登録していただき、新たな就職アドバイスやスキルアップを図るケアフィットマイスターバンク制度を構想しています。さらに、マイスターが地域の特色を生かしたビジネスを展開できるケアフィットファクトリーを作り、高齢者や障がい者も働くことのできる場所を提供したいと考えています。ケアフィットは教育現場でも生かすことができますから、そこで特に団塊の世代が子どもたちのためのビジネスモデルを作って立ち上がるべきです。

 将来はケアフィットが多くの国で認められ、ケアフィットをベースにしてさまざまな構想を実証する場を作っていきたいですね。

はたなかねん●1947年生まれ。桐朋学園短期大学演劇科在学中から劇団活動を始め、以後演劇パフォーマンスを追究した。1999年、NPO法人日本ケアフィットサービス協会を設立。
(2009.03.16)