Skip navigation.
りらいぶジャーナル

<47>引け目に感じること

 まもなく1年の任期が終わります。最初から感じていた私の「引け目」は結局なくなることがありませんでした。それは「私はただ日本人なだけで、文法をよく知っているわけではない」ということです。そんな私がいくら「会話」だからといって、教師として教壇にたってよいのだろうか、というのが最初からの不安でした。もちろんこちらに来てから必要に応じて文法を勉強しましたが、付け焼刃の知識でどうにかなるほど、「日本語教師」は甘くありません。

 私にできることはなるべくたくさんの「使用例」を挙げることしかありません。それも学生の混乱を避けるために、できるだけわかりやすい例でなければなりません。しかし、これが実に難しいことだというのをつくづく感じます。授業中にも誤解を与えたことが発覚したら、すぐに訂正するようにしていますが、きっと気づかないで進めてしまったこともあったでしょう。

 また、自分で白板に書いてしまった言葉の罠に自分で嵌ることもあります。日本語をきちんと勉強した先生たちなら上手に説明できるであろう内容でも、私が説明するためにはたくさんの例文が必要で、そのためにはまたまた予定外の時間を割かなければならず、「ああ、書かなきゃよかった」と後悔することも度々です。

 でも、途中で説明をやめることは極力避けるようにしてきました。学生が混乱しますし、何よりも諦める姿を見せたくなかったからです。

 ここは社員を育てる人材育成部です。小さなことでも「やーめた!」ということはしないで最後まで責任を取る、ということに一人でも気づいてもらえたら、というのが私の望みです。

 本当にいつもいつも「申し訳ない」という気持ちで、授業を行ってきましたが、それは学生に気づかれるわけにはいきません。私はもともとあまり物事に動じることなく、なぜか根拠なく自信があるように見えるため、多分大丈夫だと思いますが……。
★バックナンバー⇒こちら

さんべ・きょうこ●短大卒業後、ホテルなどでのブライダル関係のプロデュ-ス会社を経て、ソフト開発会社での開発デザインおよび新人マナー研修業務などを歴任後退職。在職中に中国に魅せられ、北京や山東省を中心に度々訪問。開封市(河南省)での短期留学や大連への2カ月の出張経験などを持つ。