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りらいぶジャーナル

日本人がまだまだ知らないタイ

ロンリープラネット日本語版編集部編(メディアファクトリー)777円

 タイのことを「微笑みの国」という。誰が言ったか知らないが、なるほど穏やかな国民性というイメージとしてはぴったりかもしれない。だが、国内の様々な動乱や不敬罪強化の様相を聞くだけでも、それだけではない現実があることはわかるだろう。

 本書の随所にもタイという国で何が起きているのかに触れられている。例えば子どものの性的搾取。社会的貧困が原因だが、タイ一国のことではなくグローバルな南北問題として必ず取り上げられる。「疑わしい行為を目撃したら、旅行者の責任として通報を」という記述はロンリープラネットならではだろう。

 ミャンマー難民問題もしかり。昨年はタイ当局が海上の難民を放置死させたことで国際問題にもなった。2005年からは北部の難民キャンプの住民らに対し、第三国定住プログラムにより欧米諸国で受け入れが始まり、10年秋からは日本でも受け入れる予定なので、我々とも無関係ではあるまい。

 そういった問題意識を持たせる一方、バンコクのチャーオ・プラヤー川に浮かぶ小さな島での休日の過ごし方やタイ北部の山岳トレッキングの心得、メコン川流域で目撃される謎の巨大な火の玉などの話題には好奇心をそそられる。

 コラム集なのでどこから読んでもいいという手軽さがあるが、後で読み返したいときにさっと開けないのが難点。それと各コラムごとに取材年または掲載版の記載がほしいところだ。本書はロンリープラネットのコラム・セレクション「イタリア」「ハワイ」に次ぐ第3弾として発行されたもの。