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りらいぶジャーナル

「非必須アミノ酸」だからこそ「必須」

-井口恒夫-

 消費者の科学的知識が不十分といわれる今日、まずは身近な「常識のような非常識科学」を改善していくべきではないか。

 栄養素中で最重要物質はタンパク質、その構成成分はアミノ酸である。このアミノ酸はいわゆる必須アミノ酸と非必須アミノ酸に分けられ、体内で産出するか否かの違いであると教えられる。しかし留意すべきことは、体内産生アミノ酸(グルタミン酸など)は非産生アミノ酸(リジンなど)より必須性が高いので自己の体内で産生し、低いものは外部から摂取するというように体の生理機能ができているということである。

 したがって現在の用語使いでは、非必須アミノ酸のほうが人にとって必須性が高いという矛盾した論理になってしまう。
 似たような話で、ビタミンも生理機能の調節を司っており、不足の場合には特有の欠乏症状を示すことは学校で習い、社会人の常識となっている。

 だが、これら学校教育などでの決定的な間違いは体内で作れない物質、すなわち体内非産生物質だから大切で、反対の産生物質は不要、余計なものだという短絡的な意識を人々に植え付けていることである。

 ビタミンと同様な作用を持つが、生体で必要なレベルが産生されているため摂取不要物質としてコエンザイムQ10などの「ビタミン様物質」と呼ばれる栄養素がある。ほかにもよく知られているキャベジンやフラボノイドも同じビタミン様物質だが、正式名称はそれぞれビタミンUであり、ビタミンPである。これらビタミン様物質は体内で産出するから不必要といわれることなく健康食品として一般に販売されている人気商品でもあり、また安全なのに合成保存料として嫌われている食品添加物、安息香酸のパラ体やアミノ酸のL-カルニチンもビタミン様物質である。

 しかし、教育や世間の実態としては生体の「機能科学」と食品の「栄養摂取」という分野を混同させ、生徒や消費者に浅くて不完全、不十分な知識で教育し、情報を与えている現況である。アミノ酸の場合、必須・非必須との呼称を改め、それぞれ「体内産生アミノ酸」「体内非産生アミノ酸」とすべきであろう。
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【井口恒夫】退職後に調理師学校に入学して調理師免許を取得した経験を自費出版、1000部をほぼ完売。食品衛生の仕事に携わりながら地元町内会副会長としても活躍中