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りらいぶジャーナル

70歳で介助士資格 別世界へのステップに

おもちゃドクターにも深み増す
山本義嗣さん

 知人からNPO法人日本ケアフィットサービス協会の畑中稔理事長を紹介され、サービス介助士とはどんなことをするのか、協会の理念などを聞いたという山本義嗣さん(71歳)。「これまでの仕事に介助という理念はまったくなかったこと。よし、やってみようとすぐに勉強しました」と70歳でサービス介助士2級資格を取得した。


 山本さんは海上自衛隊に34年間、主に航空部隊のパイロットとして勤務した。今春の叙勲では瑞宝双光章を受章している。「例えば自衛隊が災害救助に向かったとしても、今、自衛官には介助士がいません。介助士の心がなかったら十分な救助活動もできないでしょう。平時でも戦時でも、ホスピタリティマインドのない兵刃は弱い」と自衛官としてのあり方を指摘する。

 特に今、介助士として組織立ったボランティア活動は行っていないが、「街で車いすの人を見かけたとき、すぐに声をかけられるし、どうお手伝いすればいいのかがわかった」。また、山本さんは子どものおもちゃを直すおもちゃドクターとして3、4年活動しており、介助士の勉強に取り組んだことで「おもちゃドクターとして深みが出た」と心境の変化を語る。「おもちゃドクターは子どもの心をつかまなければならない。子どもにとっておもちゃとはどんな存在なのか、おもちゃドクターはいかにあるべきかなど、もっと突き詰めるべきだと考えるようになりましたね」と、単なる修理屋ではないという気持ちが強くなったと話す。

 介助士への見方も厳しい。「私がある障がい者に接したとき気付いたのは、彼らは決して弱者ではない、子どものころからいじめられるなどした辛い経験から、精神的に強いものを持っているということでした。介助士は高齢者や障がい者を単に弱者とし、助けるべき対象としてとらえるのではなく、そこからさらに踏み込んで考えるべきではないでしょうか」と主張する。

 山本さんは聴覚障がい者から「私たちは不幸ではありません。ただ不便なだけなんです」と言われて冷や汗をかいたという経験もある。不便だからお手伝いしようというのが本当の介助だと気付かされた。こうした障がい者と向き合うとき、「彼らと対等に話をしたいのなら、彼らの本心を理解すべき」と心の問題に言及する。

 山本さんは介助士を「別世界へのステップ」という。「これまでの会社という狭い組織ではない、もっと別の世界が広がっている。そこに入って行けるようになる」と退職者が学ぶ意義を唱えている。
(2009.06.5)


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