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りらいぶジャーナル

夢は“DASH村”の実現――地元と都市との交流の場作り、シニアに期待

NPO法人篠原の里副理事長・藤野町地域協議会長
佐藤治男さん

 東京から車で約1時間、山梨県境にある山村、神奈川県藤野町(現相模原市)で、里山づくりで都市と山村との交流を図り、地域に貢献しようと自治会などの活動に飛び回る佐藤治男さん。山村の価値を見出し、都市のシニアの方にも有効活用してほしいと希望している。


 高校までは地元でしたが、大学や仕事は東京でした。一時期、地域貢献という考えで藤野に帰り、食品・酒類業界を会員とするゴルフ場開発も行いましたが、その後また東京に戻りました。ただ、まだ地域のためにできることがあると思っていましたので、退職後は過疎化が進む地域に貢献しようと考えていました。父の畑も空いたままでしたから、そこをベースにして何かできると思っていたのです。

 そのころ、テレビで「DASH村」の番組を見て、これは楽しい、やる気になればできる環境が地元にもあると思いました。夢はDASH村の実現です。

 また当時、藤野町は周辺3町と相模原市との合併問題で紆余曲折していました。かなりもめましたが、結局100年先のことを考えると、このままでは人がいなくなる可能性が高く、町の財源も乏しいことから、合併することに賛成したのです。
 そのような状況下、私の出身小学校が廃校になりました。そこで、廃校跡を地域活性化の拠点にしようと、自治会や消防団など地元の組織で作る篠原地域振興協議会が引き受け、運営はNPO法人篠原の里を立ち上げて行うことになりました。

 この篠原の里では農業体験、炭焼き体験、木工制作などの体験もできますし、研修にも使える多目的教室の利用、宿泊もできます。食堂や保育所の運営も行っています。地域通貨「篠券」も発行しています。
 私は副理事長となり、農業部会の活動を行うことにしました。水田を使いたいという都市の方や農業に関心のある方に稲作を教えています。地元のシュタイナー学園の3年生に授業の一環として米づくり学習で水稲栽培指導をしています。

 今春から相模原市藤野町地域協議会会長となりましたので、藤野のまちづくりのため、商工会や観光協会、自治会、篠原の里を含め里山づくりを行っている各種団体をまとめていかなくてはなりません。そして、山と水と緑という藤野の価値を市民のみなさんに認めていただいて、都市の人たちに自然を提供し、人間性の回復に役立ててほしいという根幹にある考え方を持って取り組んでいく心算です。
 R&Iの会員方々にも作物を作って収穫するという喜びを味わってグリーンツーリズムを体験してほしいですね。

 ただし、これを実現するためには解決すべき課題もあります。
 篠原の里の活動には新たに移り住んできた子育て中の若い人たちが活動の中心になり、にぎやかになっています。また以前から町が芸術振興に力を入れていたため、多くの芸術家が住んでおり、その方たちも活動に参加しています。けれども、多くの地元住民は働きに出ているために、また高齢化などで参加しにくい状況にあります。参加している人、していない人のギャップがあるのです。

 さらに都市から遊びに来られた方が自然を満喫するあまり、無断で私有地に入って山菜採りやきのこ狩りをしてしまい、地主とのトラブルになることもあります。よいマナー作りをして、真心のこもった交流ができるような風土を醸成して自然と共生していく必要があります。

 都市部のヒートアイランド現象、年間3万人もの自殺者を出す現在、自然との共生トレンドにより、すでに都市の住民や多くの若者が藤野に興味を持って来てくれています。これからは人間性回復の里として、地元住民、特に高齢者との交流の機会を作ること、そこに団塊の世代を始め退職した方々、R&I会員のみなさんのお知恵とお力をお借りして協力していただけることを期待しています。

さとうはるお●1946年生まれ。大学卒業後コンピュータ企業にて営業を務め、1975年には藤野町で兄とゴルフ場開発に携わる。その後東京の印刷会社で役員に。59歳で退職。藤野牧馬自治会、藤野町地域協議会で地域活性化のために奮闘中。
(2009.04.16)