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りらいぶジャーナル

あたしは午前で、あなたは午後よ

■言わせてもらおう 私の提言 -井口恒夫-

 タイ王国が面白いということなので、10年以上前の「時効になった」話を何話か。題して「マイペンライ(構わない)」シリーズその1。

 クルングテープ(外国人はバンコクと言う)の事務所に入ると、右側の受付に2、30代の女性が「必ず1人」座っている。「サワディーカップ(おはよう)」「サワディーカア(おはようございます)」とあいさつを交わし、自分の机に向かう。

 それが赴任して1年を過ぎたころ、妙なことに気づいた。この受付には昼休み辺りには「必ず2人」の受付嬢がいるのに、それ以外のときは「決まって1人」勤務なのである。その理由を聞いて、何とも驚いた。
「あの2人、午前と午後に分けて勤務しているのよ」
「ふーん。じゃあ給料は日勤者の半分というわけだな」
「いや、日勤者と同じで月給全額もらってるよ」「ん? 半日勤めなのになんで同じ金額なんだ」
「だって2人ともタイムカード、平日の朝晩にちゃんと打たれているから」にはびっくりした。

 つまり、それぞれが出退勤のときに、相手のカードに刻印しているのだそうだ。
「ええっ! そんなこと、総務に知れたらどうするんだよっ」
「あらっ、そんなことマイペンラーイ。日本人全員が知らないだけで、総務なんかのタイ人、みんな知ってるよ」
「そんな話ってあるのかよ!!」
「だってあたしたちに迷惑がかかってないから」。
そりゃあそうだが――。「エッ!! もう10年以上、続けてるって!?」

【井口恒夫】退職後に10代の若者たちに混じり、専門学校で調理師免許取得。食品衛生の仕事に携わりながら、地元の少年補導員としても活躍中