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りらいぶジャーナル

現代の若者と向き合う

■言わせてもらおう 私の提言 -井口恒夫-

 つい先日、空いていた電車の2人席を、乗ってきた小学生高学年と思われる少年が占領した。だんだん混んできたがそのまま座り込み、その前を通る人たちは黙って通り過ぎるだけで、声をかけない。立っている人たちが出始めたので注意しようと立ち上がったところ、近くの初老の人が少年を促した。「席を一つ空けなさい」と。

 彼はびっくりしたようにノートから顔を上げ、隣席に置いていたバッグを膝に乗せた。どうも自分の都合以外には注意を払おうという意思がなかったようだ。

 定年退職後に入学・卒業した調理師学校では10代・20代の若者たちと机を並べた。最初のころにわかったことは、彼らは見た感じとは違って意外に人懐っこく、ざっくばらんな連中で、一緒にやっていけるという確信を持ったものだった。

 その体験から、今は警察の少年補導員として、見ず知らずのジベタリアンたちにも遠慮なく話しかけ、忠告ができる。目線を同じにして目をそらさずに言いたいことを言うのが基本だが、彼らは非常に素直である。

 今の定年前後の方々は本当に苦しい戦後を生き抜いて来られた。その体験は誠に貴重なもので、それを現代の若者たちに伝えていくという大切な役割をお持ちなのではないだろうか。現役時代はとても大変だったから、退職後は社会を離れてゆっくりしたいというのもそれはその通りと思う。

 だが、身近な暮らしのなかで、日本の未来を背負ってもらう若者たちとの接触を、もう一歩踏み込んで試しみられていただきたいと願うものである。

【井口恒夫】退職後に10代の若者たちに混じり、専門学校で調理師免許取得。食品衛生の仕事に携わりながら、地元の少年補導員としても活躍中