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りらいぶジャーナル

書店を拠点に日本語教育ネットワークを

●鈴木信之さん

 日本語教師、あるいは教師をめざそうとしている人たちにはなじみ深い、日本語教育のテキストや教材を発行している凡人社。それら教材のほか日本語関連の書籍を幅広く取り扱う書店、凡人社麹町店の店長代理を務める鈴木信之さんも日本語教師養成講座を修了している。早期退職し、54歳のとき、NHKの講座を受講した。
「定年に縛られない仕事はないかと探していると、電車内の日本語教師の広告が目に付きました。それで興味を持ったのです」

 平日3日間の講義に加え、土日の特別講義も受講し、丸1年通った。その間ほとんど欠席しなかった。「それが体力的にも精神的にも自信につながりました」。
 また、受講者の平均年齢はおそらく60歳近く。日本語教育に携わった経験はないが、さまざまなジャンルで豊富な社会経験を積んできた人たちばかりだったという。
「講座そのものも面白かったし、そういう人たちにお会いできることが楽しかった」と鈴木さんは振り返る。

 そんなある日、凡人社の求人広告を見かけた。「30数年のビジネス経験を日本語教育の世界で生かせないだろうか」――。鈴木さんは長年、大手合成繊維メーカーで宣伝・広告マーケティングを専門としていた。その経験が役立つかもしれないと思ったのだ。さっそく同社の扉をたたいた。「講座は修了するように」と言われ、内定をもらった。そして入社後、「知識と情報、人脈をどう築いていくかがテーマとなった」という。
 6年ほど経ち、昨年10月から同社書店に勤務、来店する大学や日本語学校、ボランティアなどの日本語教師、教師志望者、さらに世界各国の日本語学習者らとも接している。「みなさんが抱えている悩みや日本語教育に関するさまざまな考え方に日々接することができて新鮮です」。
 マーケティングが専門だったことで、日本語教育を取り巻く現状にも敏感だ。「日本語教育の世界に、そしてこの書店に足を運んでくれるだろうか」を考えるくせがついているという。
「これから来日する外国人はますます増えていきます。そのために日本語教師をどんどん育てていかなくてはなりません。しかし、教師の待遇改善、就労場所の確保、地域格差など解決すべき問題もあります。何より、まだ日本語教師を知らない人にいかに興味を持ってもらえるかが大きな課題です」
 シニアの日本語教師志望者が増えている。鈴木さんは「社会経験のあるシニアも基礎的な勉強をしっかり積んでほしい。そのうえで経験が生かせる」と主張する。
 さらに、教師同士のネットワークも重要だと指摘する。そのため、養成講座の受講生には「仲間を作るよう」強く勧めているという。「この書店を拠点として、『日本語教育の情報スクランブル交差点』を作りたい」、それが鈴木さんの夢だ。
(2009.01.06)

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