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りらいぶジャーナル

タイ、観光客誘致にメディア視察実施

市民は平穏、安心して観光を

 タイ国政府観光庁(TAT)は1月21~25日、日本のメディアをタイに招へいし、タイ国内は平常に観光できることをアピールした。昨年、バンコクの2空港が閉鎖されるなど政治的混乱の影響によって日本人観光客が激減しているため、観光客の同国への不信感を払拭し、観光振興を図るのがねらい。


 22日にバンコク都内のホテルで行われたプレスミーティングでは、ポーンシリ・マノハーンTAT総裁(=左写真)が「首相、観光スポーツ大臣の指揮の下、国際社会からの信頼を取り戻し、観光客誘致に力を注ぐ。タイの魅力的な観光地を訪れていただき、現状に理解を深めていただきたい」とあいさつ、空港閉鎖時にもTATが航空会社やホテル業界などと協力し、即座に対応に当たったことを強調、2月5~7日の日程でアピシット首相が観光スポーツ大臣とともに訪日することに触れ、日本市場への観光振興を重要視していることをアピールした。また、治安維持のための法整備が進んでいることや空港警備を強化していると語り、旅行の安全を訴えた。


 さらに、タイ日旅行業協会、ジェトロ・バンコク、盤谷日本人商工会議所、日本人ホテル会ら在タイ邦人によるパネルディスカッションを行い(=上写真)、空港封鎖当時も現在も市民生活は平穏であり、ビジネス上も支障ないことを強調した。そのなかで宮腰昌和・タイ日旅行業協会代表は「政府側の安心・安全という強いメッセージが重要だ。それが浸透すれば日本市場には望みがある」と主張した。

積み残された課題
信頼回復に長い道のり

 2007年の日本人タイ旅行者数は124万人。国別ではマレーシアに次いで2番目に多い。タイへの外国資本による投資額は低下傾向にあるものの、日本は30%のシェアを占め、第1位。タイにとって日本は経済的に重要な顧客だ。

 2月5~7日に予定されているアピシット首相の訪日では経済回復に向けてのタイ日連携強化を訴えるものとみられる。同時に、観光スポーツ大臣が同行するということは観光産業の復興をめざしていることは明らかだ。
 タイ旅行のリピーターや長期滞在経験者らにとっては、政情不安についてさほど影響はないようだが、新規の旅行者にはイメージが悪い。さらに、在タイ邦人の一部からは、空港占拠に対する責任追及が甘いとする声も聞かれる。

 空港を占拠した反タクシン派団体「民主主義のための市民同盟(PAD)」は当時、窃盗や暴行などの罪を犯したばかりか、2900億バーツ(約7770億円)もの経済損失を招いた(タイ中央銀行の試算による)。しかし、この事件に関する逮捕や起訴はない。そればかりか、アピシット新内閣は、PADの集会で演説を行い、空港占拠を正当化する発言を行っていたカシット・ピロム元駐米・駐日大使を外相に起用した。

 市民生活を見る限り、際立った混乱はない。これまでどおり観光には問題ないだろう。タイ国政府は観光業支援策として、観光ビザ申請料を無料にする、空港着陸料を20~50%に引き下げるなどの対策も打ち出した。
 だが、ある在タイ邦人は「それで簡単に観光客が戻るとは思えない」と首を振る。根本的に、事件に対する“けじめ”が求められるが、政府への期待感は薄い。観光業関係者らも空港占拠が観光客に与えたダメージは甚大と見ており、信頼回復には長い時間がかかりそうだ。
(2009.02.02)