認知症 気持ち知れば変わる
疑似体験でかかわり方知る
認知症の人とどう接すればいいのか――。その接し方を疑似体験しようと、リタイアメント情報センターでは11月、現場経験豊富な講師を招き、第4回シンポジウム「認知症なんてコワくない」を開催した。
「『あいうえお』だけで言いたいことを伝えてください」
講師の宮田真佐美さん(写真)がそう告げると、参加者のグループの一人が「あー、うー」とうなり始めた。本人は「トイレに行きたい」ことを伝えたいのだ。回りで聞く人は何とか理解しようと顔の表情や口調に注目する。
「認知症の人は伝わらないことにもどかさやいらつきを覚え、さらに伝えること自体、『面倒くさい』と思ってしまいます。そんなとき、『どうしたの』と優しく見ることで気持ちが和らぎます」と宮田さん。こうした簡単なゲームで双方の気持ちを疑似体験していく。
また、「『財布を確かにしまったのに、なくなっている。嫁が盗んだのではないか』と言う」「ご飯を食べたばかりなのに、『食べていない』と言う」「突然家を出て、道に迷ってしまう」と、それぞれのケースを認知症の人とその家族という設定で寸劇を演じた。
「相手に心配していることを伝え、そして受け入れることが大事ですね」
否定・説得・責め・急かし禁物
寸劇では宮田さんから好評価を得たものの、現実生活ではそれが継続する可能性が高い。家族はいつまでも終わらない緊張と不安を抱えることになる。しかし、一人で抱え込まず専門家に相談したり、周囲に認知症の人を家族に持つ人がいたら声をかけたりするなど、今から意識することが大事なのだ。
宮田さんは認知症の人とのかかわりで重要なこととして、「否定しない」「説得しない」「責めない」「急がせない」と説く。そもそも「認知症の人」ととらえて身構えるのではなく、自然にさりげなくかかわることが大切だと話す。
「荷物は分かち合えば軽くなる。何がその人の力になり、何が力を削いでしまうのかを知ることです」
参加者からは「このワークショップを受けてから、実際に親との接し方が変わった」という声も聞かれた。
(2010.12.17)
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