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りらいぶジャーナル

気持ちがわかれば気づくことがたくさんあります

R&I第4回シンポジウム
認知症ワークショップ

 NPO法人リタイアメント情報センターの第4回シンポジウムでは、認知症患者とどう向き合うかをテーマに「認知症セミナー」を開催する。講師は石川県で認知症対応型のデイサービス「ゆいま~る」などを運営するNPO法人ニット理事で看護師、社会福祉士、ケアマネージャーとして活躍する宮田真佐美さん。本セミナーの目的を聞いた。

――もの忘れが激しいというのは認知症の表れなのですか。

「いえ、もの忘れと認知症の記憶障害とは違います。もの忘れの場合、内容は忘れてしまっていても、自分が何かしたことは覚えていますよね。たとえば何を食べたか覚えていないけれども、朝食を食べたことは覚えているというように。

 けれども、認知症の場合は行為そのものを忘れてしまっています。だから朝食は食べたのに、『食べていない』とおっしゃるのです。生活上の会話のなかでこうしたことが度々あれば、ご家族の方も『おかしい』と気づくと思います」

――ほかにどんな特徴がありますか。

「計算能力が落ちる方が多いので、お金の支払いで困ることがあります。家族が何かの支払いについて本人に確認したとき、うまく思い出せないので言葉を濁します。その積み重ねで、気がついたらご本人の通帳が空っぽになっていた、なんてことがあるのです。

 『食べた』『食べない』というように、短い記憶から忘れていくという特徴があります。自分で習得した行為についての記憶を手続き記憶といいますが、そのような記憶は比較的保たれています。ところが、直近の出来事になると忘れてしまいます。また新しいこともなかなか覚えられないという特徴があります」

――すると、対応も難しいのでは。

「認知症による行動障害は自分自身で現状を何とかしようということの表れです。病気の特徴を理解してごく普通にかかわっていれば、対応が難しいことはありません。認知症といっても同じ感覚を持った人間だ、たまたま記憶障害があるだけだと思えば、本人も安心できる対応ができます。むしろ、認知症になると何もできなくなって大変だと思ってしまう私たちに問題があるのです。誰にでもかかり得る病気なのですから」

――セミナーではそこがポイントになりますね。

「認知症の方の気持ちがわかれば、対応も変わってきます。今回ワークショップを行いますが、そこでみなさんに認知症になった人の気持ちを体験していただきます。すると気づくことがたくさんあります。自分が認知症になったときに周りがどんなかかわり方をしてくれたらいいのかがわかるでしょう。そうすれば、家族だけではなく近所の方にも注意が向き、認知症だとわかれば協力することもできますね」

――かかわり方を知ることでどんな変化がありますか。

「まず認知症の方の気持ちや行動が安定します。ある認知症の方は自分をどうすることもできなくて不安になり、ご家族に対して暴れて当り散らしていたのですが、私たちの施設に通ううちに安定してきました。昔、よく自分で魚をさばくほど料理が好きだったことを思い出し、料理を作ってくれるようになったんですよ。持っている力を引き出し支えることが大事なんですね。

 それに家族など周りの人もその方の行動の理由がわかれば接し方もわかるので、楽になります。こうした認知症患者さんをお持ちの家族会もあり、周知のための活動も活発になっています。

 みんなの理解があれば認知症の人も安心して暮らせる社会を作っていける。そういうことを伝えていきたいですね」
(2010.10.29)


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