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りらいぶジャーナル

タイで日本語を教える

 日本語教師として活躍できる場として海外の日本語学校がある。今回、タイ国内にある2つの日本語学校を訪ねた。どちらも毎年教師を募集している。教師に必要な資質を聞いた。

◆国書日本語学校
      ――チェンマイ

 チェンマイにある国書日本語学校は2004年に開校した。東京の出版社、国書刊行会が経営母体の国書日本語学校の提携校となっている。

 主任の小沢秀幸さんはサラリーマン生活を22年送った後、日本語教師となり、チェンマイにやって来た。チェンマイ大学で教えていたこともある。渡航後10年経った今年、還暦を迎えた。

 同校の学生のほとんどは日系企業に勤める社会人。日本語学習経験があり、よりスキルアップを図りたい中級以上のレベルだという。在籍する日本人教師は4名、タイ人教師が5名。

 「教師に求めることは基本的に優しいことと人に興味があることです。教え方のノウハウは教師養成講座で身につけられます。でも大事なのは、商品は自分自身であるということです。歩んできた人生や考え方など言葉が通じなくても学生にはわかります」
 小沢さんはそういう意味で、教師という仕事は厳しいのだと主張する。

「海外で教えるということは、違う価値観とぶつかるということ。凝り固まった価値観は通用しません」。これは海外生活を送るうえでも同じことだろう。

 小沢さんは「教えることが面白い」と言う。「手加減せず全力投球したストレートのボールを学生がミットでバシッと受け止める。なかなかないですが、その瞬間が非常に気持ちいいですね」

 同校ではタイ語スクールも開講している。滞在中に学習するのもいいだろう。なかには10年先にチェンマイでロングステイすることを決めた40代の現役会社員が休暇のたびに同校に通い、準備を始めているという。

◆ジェイエデュケーション
           ――バンコク

 バンコク都内の繁華街に位置するオフィスビル内にはジェイエデュケーションがある。
 学習者は10~20代の高校生、大学生が中心で、日本への留学希望者が多く、学校の紹介も行っている。もともと10年前からタイ留学希望者向けにサポートを行ってきたが、6年前から日本語学校を始めた。そのとき、東京のインターカルト日本語学校の協力を得たという。日本人教師は6名。

 学生が多いため、教師も20~30代と若い。ただ、シニア教師の必要性も感じ始めていると、運営するライトハウス・インフォ・サービス代表の長谷川卓生さんは言う。「上級クラスほど、人生経験豊富な方に教えていただいたほうが学生も充実すると思います」

 校内にはフリースペースがあり、月1回タイ人学生と日本人との交流を目的としたフリートークも開催していた。50代日本人も参加していたという。
「どこでも教えられるという気概を持った方を教師としてほしいですね」

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 チェンマイ在住のある日本語教師から「いま、タイ人と日本人の間に生まれた子どもに対する日本語教育が課題だ」と聞いた。2つのルーツを持つ子どもにとって、タイ語を始めとするタイ文化は日常だが、日本語ももう一つのアイデンティティだ。これからその取り組みを始めるそうだが、こうしたテーマににも日本語教師がかかわれるのではないだろうか。
(2010.10.23)