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りらいぶジャーナル

バトンタッチはいつ、どうする? 戦争の記憶というバトン

日本のいちばん長い夏

 日本が盛夏を迎えるこの時期、広島・長崎の原爆、そして終戦が話題となる。だが、戦争体験者から直にその話を聞いた、という人はいま、どれだけいるだろうか。それ以前に、生き証人のほとんどがこの世を去ってしまっている。

 昭和38年(1963年)6月20日、東京の料亭「なだ万」に、終戦時、政府内閣や軍の中枢部にいた者、前線の兵士、外交官、新聞社記者、アナウンサー、俳優、獄中の共産党員、イギリス人捕虜、沖縄の野戦病院看護婦など総勢28名が集められた。そこで終戦の舞台裏が5時間にわたって語られたのである。ポツダム宣言に対する日本政府の対応、それによって引き起こされた原爆投下、ソ連軍侵攻、そして終戦に至るそれぞれの出来事が明らかにされた。

 その座談会の模様が同年の文藝春秋8月号に「日本のいちばん長い日」と題して掲載された。座談会を企画したのは当時文藝春秋編集部員だった作家の半藤一利氏だった。

 本作品の主人公はテレビ番組の演出家。父の墓参りをした帰り道、彼は父から戦争の話を聞きたいという思いがこみ上げた。生きているうちに戦争の話を聞くことができなかったのである。そこで半藤氏への取材と同時に、当時の座談会を再現しようとスタジオに料亭のセットを建て、文化人・知識人らを俳優に仕立て、座談会出席者の役を割り当てる文士劇の形を試みた。彼らのなかには戦争体験者も非体験者もいるが、演出家は彼らにそれぞれの戦争観を問うていく。

 文士劇であるから、それぞれが台詞を発してはいるが、それは同時に現代を見つめる彼らの、現代日本に対する発言としても伝わってくる。

 本作品の倉内均監督は1949年、昭和でいえば24年生まれの団塊の世代。倉内氏は60歳を前に、父親が青春時代であった戦時中をどう過ごしていたのかを思い巡らすのだが、父親は何も語ることなく、この世を去っていったという。
 聞いていれば答えてくれたかもしれない。あるいは、あえて語らなかったかもしれない。おそらく倉内氏と同じような思いを抱いている団塊の世代も多いのではないだろうか。

「日本のいちばん長い夏」
監督・脚本:倉内均
原作:半藤一利編『日本のいちばん長い夏』(文春新書)
出演:木場勝己 池内万作 キムラ緑子 湯浅卓(国際弁護士) 中村伊知哉(慶応義塾大学教授) 青島健太(スポーツライター) 山本益博(料理評論家) 松平定和(アナウンサー) 富野由悠季(アニメ映画監督) 林望(作家) 鳥越俊太郎(ジャーナリスト) 立川らく朝(医師・落語家) 島田雅彦(小説家) 田原総一郎(ジャーナリスト) 市川森一(脚本家) 江川達也(漫画家) デイヴィッド・ディヒーリ(ジャーナリスト)ほか

■上映
新宿バルト9、丸の内TOEI②ほかにて8月7日ロードショウ