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りらいぶジャーナル

曙の幻想 古代大和を創った三韓の王族

高岡照子著(梅里書房)2000円+税

 縄文、弥生そして出雲を中心とした「神話の世界」を経て、飛鳥・天平の古代国家の時代までを描いた日本古代史の書である。特徴的なのは、それまで日本の歴史学においては「通説」とされてきたものに疑いを持ち、「仮説」に立脚したうえで歴史を再度紐解いていくという点だ。

 例えば、日本王朝の創始の時点から「仮説」のスタンスを取る。「通説」では『日本書紀』に描かれた第1代の神武天皇とそれに続く8代の天皇は「架空の人物」であり、実在した最初の天皇は第10代の崇徳天皇であるとしている。しかし著者はこの説に疑義を挟み、天皇は「渡来系部族」の末裔であるという説に立脚する。そして、「神武天皇=新羅系大王の始祖、崇徳天皇=加羅系大王の始祖、応神天皇=百済系大王の始祖」だという。こうした歴史の「異説」はファンにとってはロマンにあふれ、たまらないものだろう。

 著者は本書を書くうえで、相当の歴史的資料の検証を重ねたことは参考文献の多さなどからもうかがい知ることができる。ただ、序盤の部分でなぜ通説を疑い、「異説」を採用するに至ったのか、その思考の過程をもう少し丁寧に解説してもらえると、なおわかりやすかっただろう。