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りらいぶジャーナル

何事もポジティブ・シンキングで行こう

――夢実現のための第一作を製作した阿部秀司さん
株式会社ロボット創業者・顧問、「RAILWAYS」製作総指揮

 「りらいぶ」を人生の再チャレンジという意味で考えれば、まさに自分自身がその最中にいるという。映画「ALWAYS 三丁目の夕日」シリーズなどヒットメーカーとして知られる映画プロデューサーの阿部秀司氏は新たな挑戦を始めたばかり。育て上げた会社の社長を辞めて、60歳で新しい会社を立ち上げた。その第1作目が「RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語」である。

 私の人生も「りらいぶ」の連続でした。大学を出て12年間広告代理店に勤めて、それから製作会社ロボットを立ち上げて24年です。確かにそれなりの実績を上げることができました。ところがある日、ふと「いつまでやればいいんだ?」という疑問が湧いてきたのです。引退したいと思ったわけではありません。仕事に関しては死ぬまでやると決めています。とにかく働きながら死ぬというのが自分の人生だと思っていますから。どうせ死んでから休めるじゃないかと(笑)。

 いままではどちらかといえば会社のために仕事をしてきました。これからは簡単にいえば自分の「夢」のために仕事をしたい。作りたいものを作りたいという気持ちが湧いてきたのです。

 企画の初期の段階では、リストラされた49歳の男が電車の運転士になるという設定でしたが、それは違うと思いました。それだったら電車の運転士でなくてもいいわけです。第一線でバリバリ仕事をしている人が夢のために現職を辞めるということにこだわりました。ベクトルが上を向いているときに辞めないと意味がない。それが私の持論でもあります。

 映画では、中井貴一さんが演じる主人公の筒井肇は上司から「リストラすれば取締役になるよ」というエサをぶら下げられる。大手電機メーカーの経営企画室という立場だから相当のエリートですね。それを捨てて電車の運転士になるというストーリーにしました。もともと監督の錦織良成さんにとっては故郷の町おこしという思いもあり、実在する一畑電車を舞台した鉄道映画としても成立します。
 
 物語はフィクションですが、なぜか実話と勘違いしている人が多い。それだけ時代の空気にフィットしているということかもしれません。

 本作の主人公は私と10歳違うけれど、自分の生き方とシンクロする部分がたくさんあります。基本的なことは人生でも何でも「どうポジティブに置き換えていけるか」ということでしかないんですよ。私の友人にもそれなりの企業に入っていて、実力があっても年齢で切られていくということがあり、忸怩(じくじ)たる思いがあります。私もそのなかの一人である団塊の世代へのメッセージも込めました。

 実際にはこうしたことはあり得ないかもしれません。価値観を増幅して置き換えただけです。映画というのは自分のいいたいことをエンターテインメントというオブラートに包んで、見ている人に説教がましくなく楽しませてあげるものです。そのうちに心に何かが刺さって人生を変えるきっかけの一つになれば、作り手としては幸せです。

★2010年5月29日ロードショウ★
RAILWAYS 49歳で電車の運転士になった男の物語
 一流企業に勤める筒井肇49歳は近々昇進も決まり、会社での地位も確立していた。しかし家庭を顧みないことから家族とは心が離れていた。そんな折、故郷・島根で一人暮らしをしている母親が倒れる。同時に同僚を事故で失う。久しぶりに帰った故郷で肇は「俺はこんな人生を送りたかったのか」と自問。母親が大事に取っておいてくれた、子どものころに集めていた「バタデン」(一畑電車)の切符を見つけ、電車の運転士になりたかった自分を思い起こした。肇は夢の実現のため一念発起、バタデンの運転士を目指す。出演=中井貴一、高島礼子、本仮屋ユイカ、三浦貴大、奈良岡朋子ほか。配給=松竹。2時間10分。

(c)2010「RAILWAYS」製作委員会
(2010.05.21)