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りらいぶジャーナル

NHK集金人の光と影 ~1/6の自分史~

谷口斗樽著(武田出版)819円

 2004年、プロデューサーの不正経費問題に端を発し、不祥事が次々と明るみになったNHK。以後、受信料の未払いが急増し、制度の見直しを求める声も上がっている。
 本書はそのNHK受信料の集金業を1991年から00年まで行っていた著者の回顧録である。

 まだ不祥事問題が表面化する前の時代だが、それでも受信料未払い者は多数いた。著者はNHKの営業センターから委託を受ける形で未払い受信料の回収に尽力したが、悪戦苦闘の連続だった。勝手な屁理屈で支払いを拒否する人、居留守を決め込む人、脅しや暴力的な行為で追い返そうとする人まで――。著者も相当ストレスを感じていたらしく、血圧が180を超え、仕事を辞めるに至ったという。

 しかし、仕事のなかで培った「人間観察の術」が非常に興味深い。「表札の種類とNHKの受信料支払いの間には、間違いなく関連がある」といった記述は体験者にしかわかりえない「生きた経験則」だ。そうしたエピソードを多数記した本書はハッと思わせる新鮮な発見に満ちている。

 願わくば、当時より悪化しているだろう現在の受信料制度の最前線を改めて世に発信してもらいたいものだ。