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りらいぶジャーナル

<総集編>教師生活を振り返って思うこと

三瓶香子さんにインタビュー

 中国・杭州市のIT企業、東忠にて日本語会話の授業を担当し、1年間の任務を終えて帰国した三瓶香子さんに、1年間を振り返ってもらった。

――初めて教壇に立って、いかがでしたか。

「最初はとにかくひたすら授業をこなすだけで精一杯でした。でも慣れてきたら、クラスの様子を見て私の態度を変えていく余裕が生まれました。茶々を入れられても聞き逃さず、すべて真面目に受け止めて日本語で返したり、脱線することがあっても日本のことだったらその話題につなげていったり。授業は予定通りには進まないことが多いので、あまり初めにキチっと決め過ぎると逆に焦ってしまいます。

 それとよく学生に『話すのが早い』といわれました。確かに私は早口のほうですが、でも会話の授業なので、実際に日本人と接するときのことを考えるとこれぐらいのスピードに慣れてもらわないといけないと思って押し通しました。

 それから、私が口走ったことで、いわなければよかったと思うことがよくありました。後で学生に質問されても適当な説明ができなくて困ったんですね。自分の言葉に責任を持つということを実感しました。
 あとは、やはり最低でも日中関係や文化、歴史を勉強しておかないとだめですね」

――会話を教えるという点で工夫したことはありますか。

「これは友人の教師に教えられたのですが、自分の頭を『例文図書館』にするということ。実際の会話ではどう使っているのか、例文をたくさん挙げることが大事ですね」

――印象に残っている学生はいますか。

「授業中おしゃべりして困る学生がいました。文法もあまりできなかったのですが、1、2カ月経ったら突然やる気が出て、会話評価が非常に高くなったんです。会話の授業になって面白くなったんでしょうね」

――J-POPや日本のアニメ、漫画で日本語に興味を持つ学生も多いでしょう。

「そうですね。ただ、何でも漢字にしてしまうので困りました。例えば『名探偵コナン』の『コナン』は『可南』、『浜崎あゆみ』の『あゆみ』も『渉』って書くんですよ」

――生活するという点で、杭州という街はいかがでしたか。

「住みやすかったですね。治安もよかったです。生活費は家賃を除いて月1000~1500元(約1万3000~2万円弱)あれば十分。近所の市場では野菜は量り売りで、生活小物なども手に入りました。バス路線を熟知すると移動も楽しいです。ただ、最近中国のオンライン商取引サイト『アリババ』が杭州に来たことで、地価が上昇してしました」

――コラムでも書いていましたが、スケジュール帳は不要だとか。

「学校の授業でも何でも相手と事前に予定を決めていても、くるくる変わるんですよ。だからスケジュール帳を持っていても意味がないんです。それにいちいち腹を立てていたらストレスを溜めるばかり。これが中国なんだと楽しむくらいの余裕がないとだめですね」

――中国人との接し方で気づいたことは。

「中国人はパーソナルスペースが狭いと思います。つまり相手に近づけば近づくほど仲間意識が強くなる。親近感が増します」

――改めて教師生活を振り返って思うことは。

「教師はある程度、年を取ってからのほうがいい。私ももう少し人生を経験していたら、もっと上手な教え方ができただろうし、もっと気持ちに余裕があったと思いますね。そういう点で学生には申し訳なかったかなと思います。だからシニアにとってはよい仕事になると思います」

――お疲れさまでした。ありがとうございました。
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さんべ・きょうこ●短大卒業後、ホテルなどでのブライダル関係のプロデュ-ス会社を経て、ソフト開発会社での開発デザインおよび新人マナー研修業務などを歴任後退職。在職中に中国に魅せられ、北京や山東省を中心に度々訪問。開封市(河南省)での短期留学や大連への2カ月の出張経験などを持つ。