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りらいぶジャーナル

懇切丁寧にカルテ作成、ウェブで病院開設

<おもちゃ病院あっちこっち>
長凡さん(杉並おもちゃドクターズ、おもちゃドクター)

 東京の「杉並おもちゃドクターズ」の一員である長凡さん(74)は地域のおもちゃ病院ドクターとしても活動しているが、おもちゃ病院のなかでも珍しい「Webおもちゃクリニック」を2000年から開設している。おもちゃの“治療”にもっと時間をかけてじっくり取り組みたい――。そんな思いがあったからだ。

 「実際のおもちゃ病院では次から次へと修理の依頼が来ますので、早く直さなきゃと、焦ってしまうんですね。もっと時間があれば直せるのになあと心残りがあったんですよ」

 さらにおもちゃ病院も人の病院同様、首都圏など都市部に多く、地方に少ないという地域偏在の問題がある。「ウェブなら“無医村”のおもちゃも救えると考えたのです」
 修理したいおもちゃの症状はE-メールで受け付け、現物は宅配便で配送してもらう。ほぼ1週間以内に修理して返却する。

 ただ、ウェブはリアルな病院と違い、持ち主には長さんの顔が見えないため不安を抱きがちだ。そこで長さんはカルテを作成し、修理記録をウェブで公開している。
 「修理を受け付けたすべてのおもちゃについて、症状や修理後の注意事項などのほか、処置記録を写真入りで解説したカルテを作り、持ち主に渡します。またそれをコピーしてウェブ上に公開していますので、それがお客さんの安心につながっています」
 かつ、カルテはおもちゃドクターにとっても修理の参考になるという。

ぬいぐるみと人形“専門医”にも

 1つのおもちゃの修理には平均1日かける。足りない部品があれば買出しに行く時間もある。開設してから蓄積したカルテはこれまでに2500件以上だ。
 そのなかでも特徴的なのは修理の3分の1はぬいぐるみと人形だという。昨年のデータを見るとそれが4割近い。リピーターも多いという。

 そのため、長さんの部屋では夫人の嫁入り道具である足踏みミシンがいまも活躍している。細かい作業に適しているそうだ。また四足のぬいぐるみには縫製の順番があり、そのとおりに針を通さないと形にならないなど、縫製の仕方がわかってくるという。
 「ぬいぐるみや人形には執着心が強い。だから何度も修理に来ているぬいぐるみなどは布が真っ黒です。それでも遊んでくれているんですから、うれしいですね」

ドクターに必要な熱意

 長さんは放送電波の送信設備の技師だった。定年退職する5、6年前に近くの公民館でおもちゃドクター養成講座を開催することを夫人が知り、促されて参加したことがきっかけだという。やはり機械を直す喜びと、子どもの喜ぶ姿がやりがいだ。ただ誰にでもできるというものではないと長さんは明言する。
 「ドクターになるには熱意が必要。自分から積極的に参加しないと長続きしません。特に会社など組織を忘れられない人はおもちゃドクターはもちろん、“地域デビュー”しないほうがいい」
 ドクターにもチームワークが必要。頭の切り替えとコミュニケーション能力が必須のようだ。
(2010.03.05)
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