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りらいぶジャーナル

芸者から、名歌手へ 小唄勝太郎の生涯

児玉義男著(新潟印刷)1575円

 昭和初期から戦後にかけて一世を風靡した歌手・小唄勝太郎。今やこの歌手を知る人も少なくなりつつあるが、神宮球場で東京ヤクルトスワローズの応援歌として唱和される『東京音頭』を大流行させた昭和を代表する流行歌手なのである。出身は新潟県中蒲原郡沼垂町(現新潟市中央区)だ。

 著者は2004年5月、地方紙「新潟日報」で「小唄勝太郎生誕百年」を記念した記事により、彼が郷里の小学校にグランドピアノを寄贈していたことを知る。1934年のことであったという。郷里の小学校が著者の出身校でもあったことから、小唄勝太郎に近親感を抱いた。それが本書執筆の動機だった。以来3年間あらゆる資料を漁り、それを集大成したのが本書である。

 400字詰め原稿用紙に自筆でびっしりと書き込まれた原稿200枚余りが小唄勝太郎への並々ならぬ愛情を感じさせる労作である。巻末に付された年譜、レコーディング曲一覧を含め、昭和芸能史の貴重な資料といえよう。