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りらいぶジャーナル

「子どもに胡麻すり」の社会化現象

-井口恒夫-

 パナソニック社のJR線車内広告を見て驚いた。「いちばん子供部屋に買ってあげたい家電かも」とある。「買ってあげたい」とは! とうとう子どもへの胡麻すりが家庭を飛び出して社会現象になってしまった。

 子どもの自由を尊重すべしとか、個性を伸ばすなどと小さいときから個室を与え、何でも無制限に自由にさせた結果、当然忍耐力も想像力もない、ただの権利人間になってしまう。

 三浦朱門・曽根綾子夫婦の家庭では、子どもが小学生のころしばらくテレビがなかったことがあるという。「家庭に民主主義はいらない」として三浦氏は「息子が小学5年のころ、あるテレビ番組を見たいと言ったが、食事の時間だったので見なくてよいと答えた。そしたら、『みんな見ている』と言ったので、腹を立ててテレビを庭に捨てた。それから6、7年間、我が家にはテレビがなかった」そうだ。

 『スポック博士の育児書』という図書は世界で5千万部を超え、日本でも育児に大きな影響を与えたが、米国では現在「子どものやりたいことをやりたいように育てる、この育児法」が結果として自己中心的で社会の一員であることが自覚できない子どもたちをつくってきたとして、厳しい批判にあっているという。
 戦後の教育は子どもに余計な気を回し、道徳に反することまで許したから、彼らは自分の意思で進路を選び取るという意味も方途も見失い、親も自分の娘が「援助交際」という売春をしても「いけない」と教え諭すことすらできなくなってしまった。

 この日本は家庭の教育力を放棄してしまった結果、あまりにも寒々しく悲惨な社会実態である。
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【井口恒夫】退職後に調理師学校に入学して調理師免許を取得した経験を自費出版、1000部をほぼ完売。食品衛生の仕事に携わりながら地元町内会副会長としても活躍中