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りらいぶジャーナル

受付で素早い診断プロの技

<おもちゃ病院あっちこっち>
吉田勲さん(日本おもちゃ病院協会理事、おもちゃドクター)

 千葉県内のおもちゃ病院6カ所を“回診”し、さらにドクター養成講座などにも講師として出張する吉田勲さん(67)。秋の大学祭シーズンにはキャンパス内での病院の依頼もある。当日に直すことができればいいが、入院の必要なおもちゃは自宅で治療に取り組む。「何だかんだで、結構忙しいですね」と苦笑する吉田さん。だが、とにかくおもちゃに向かって工具を駆使しているときが一番充実しているようだ。

 吉田さんがおもちゃドクターとして活動を始めて7年になる。もともとプラントエンジニアとして、またプロジェクトマネージャーとして海外にも飛び回っていた。定年ぎりぎりまで仕事に精を出していた。

「いままでのように拘束されているのはいやだけれど、社会とのつながりは持っていたい。そして人の役に立つことをしたい。それに自分も楽しまなくてはいけない。そういう思いでインターネットで見つけたのがおもちゃドクターだったんです」

 定年後は生涯職業能力開発促進センターで政治、経済、会計、マネジメントなど総合的に勉強もしていたが、同時に次の生き方としておもちゃドクターを選び、養成講座を受けていた。
(持ち込まれたおもちゃを診断する。おもちゃ病院トイザらス市川店で)
「子どものころから鉱石ラジオや真空管ラジオが好きでした。定年を迎えて、それがふっとよみがえってきましたね。好きなことが生かせて、かつ人の役に立つ。子どもだけでなく幅広い年代の人たちとコミュニケーションが取れるのが楽しいんですよ」

 昨年は鹿児島県に赴き、養成講座を開催。受講者らが病院を開業した。おもちゃ病院協会理事としての立場もある。会の運営にも携わらなければならない。
「いま地方のドクターが不足しています。ドクターと病院を増やし、ドクター同士が技術交流できるよう、地方の課題解決に向けて構想を練っています」

(若いドクターにアドバイスする吉田さん。千葉おもちゃ病院千葉市子ども交流館で)
 人材を育てていく立場でもあるが、やはり自分が現場に立っているときが楽しいという。
「病院は受付が重要なんです。どこに壊れた原因があるのか推定し、分解できるかできないかをその場で判断しなくてはなりません。そしてお客さんの意向どおりに作業を進めなければならない」
 まさに経験がものをいうのだ。一瞬厳しい表情を見せる吉田さんだが、子どもの笑顔にはすぐに顔がほころぶ。
「頼りにされているということで一生懸命になれる。それがやりがいになっています」
(2009.11.20)
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