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りらいぶジャーナル

エコナオイルの自滅と「食品安全」

-井口恒夫-

 花王はこの9月に「販売自粛」した「エコナクッキングオイルとその関連商品」群を約1カ月後に「販売中止」とした(10月9日付商業誌)。問題視されている不純物を減らし、来年2月に再販すると宣言した同社の甘いモクロミは破綻した。「食品の安全」を規制する「食品衛生法」では、食品は安全、食品添加物は危険との原則を基にしている。したがって食品であれば、どんなものでも製造、どこからでも輸入、そしてどこでも販売が原則自由である。

 一方の食品添加物は内閣府直轄の食品安全委員会関連部門で安全性が確認されてから、厚生労働大臣の指定によってだけ使用が認められる。だからわが国では食品よりも食品添加物のほうが安全といってもおかしくはない。小学校では毎年のようにジャガイモの常在毒物ソラニンで食中毒を引き起こさせられる生徒が後を絶たない。学校在職者の科学的知識の極端な不足が原因で呆れるばかりだ。飲食店の調理人はジャガイモを手にすると、反射的に芽や緑色の部分を除去する。理科の教師たちがこんな程度だから、日本国民の科学的知識のお粗末さはそれを上回り、「無添加食品」「化学調味料不使用」といった食品添加物に対する非科学的宣伝に同調する消費者が減る訳もない。

 だから花王に限らず、経営・販売者としては消費者を甘く見ていても当たり前である。官庁連関部門、消費者団体やその道の学者方の長年にわたる的外れな消費者向け広報をしてきた、いや放置してきたツケが回っている現代である。

 同日付の紙面では消費者行政をウォッチするとして26団体がネット参加するとの記事があり、消費者相も歓迎の由で、その目的は「消費者庁や自治団体などによる消費者行政を消費者の視点で監視していくこと」だそうだ。
 だけど福島大臣、そして参加するという消費者団体、弁護士、司法書士さん方よ、視点であるその消費者の科学的知識のピントを外してひん曲げた部分も、しっかり反省したうえで併せて直してくださいね。

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【井口恒夫】退職後に調理師学校に入学して調理師免許を取得した経験を自費出版、1000部をほぼ完売。食品衛生の仕事に携わりながら地元町内会副会長としても活躍中