大学教員による日本語教育
各種教材の作成法学び応用力も
ラボ日本語教育研修所
中高生の海外ホームステイや長期留学支援を始めとする各種国際交流事業を行っている財団法人ラボ国際交流センター(東京都新宿区、佐々木毅会長)は1987年、外国人の日本語教育の需要に応えるべくラボ日本語教育研修所を設置、日本語学校と同時に日本語教師養成講座をスタートさせた。1年または1年半で全科目を修了する本科コースと、自由に科目を選択できる選科コースの2コース制。その科目のほとんどを大学教員が受け持つ。
「66年に東京大学名誉教授で言語学者の故服部四郎博士が設立にかかわった東京言語研究所があります。言語学を広く開放し、学習しやすい環境をつくったのですが、そうした経緯で養成講座にも大学の先生方がかかわっています」と黒崎誠事務局長代理。
当時は日本語教育ブームであり、民間の日本語教師養成講座が林立した。しかし、中には不適格な業者も存在したため、教員らが危機感を抱いたということもあったようだ。
実習科目にはウェブリソース利用法や海外での教材作成など「どんな現場でも対応できる」よう科目をそろえているのも特徴的だ。
シニア層の受講生の姿も毎年見られる。20年の間も必ず2、3名のシニアが受講しているという。
そんなシニア受講生を黒崎氏は「モチベーションは高い」と評価する。ただ、若い人と比べても肉体的に極端な差はないが、諦めが早い部分がみられるという。「壁にぶつかったとき、頭を切り替えれば前に進めるのに、どこかでブロックしてしまったり、悪い方向に考えてしまう傾向があるようです。でも、そこを乗り越えられると強い。柔軟性が出て、パワーを発揮しますね」
そこが一つの山のようだ。
講座修了後は自分なりの仕事の仕方をじっくり探すシニアが多いようだが、中国で信頼度が高く教師として成功するケースが多いそうだ。黒崎氏は「今後さらに、どうシニアの活躍の場をつくっていくか、模索しているところ」と話す。
「日本語教師は日本語を教えるだけでなく、コミュニケーションスキルを持っているということが重要。これから異文化理解のスキムを発揮する役割を担うことが多くなるでしょう」
さらにシニアの人脈を生かしていくことができるのではと期待を寄せる。「志を持った人を連携し、適所に配置し、人の流れをつくることが必要です。これから国内においては外国人が地域社会に溶け込んでいけるよう手助けをすることが日本語教師に求められると思います。シニアの地域貢献に生かせるのではないでしょうか」
さらに、退職した学校教員への期待も大きい。学校現場での外国人児童への日本語教育も急務だが、そうした教育現場にスムースに入っていける元教員が重宝される。「日本語の専門家であると同時に、児童・生徒と学校、そして地域とのつながりをつくっていくことができる」と、ますますシニア日本語教師の活躍の場が広がる可能性があるようだ。
(2009.10.20)