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りらいぶジャーナル

エコナクッキングオイルの自滅

-井口恒夫-

 花王は何とも危険な商品を華々しく世の中に出し、しこたま稼いだあげく、終売に入ったものだ。「エコナクッキングオイルとその関連商品」群を「販売自粛」と広告したが、この油については当初から安全性に疑問符が付いていた。

 効果・効能があるという主成分「ジアシルグレセロール(DG)」や不純物「グリシドール脂肪酸エステル(GD)」の安全性は担保されたとはいえず、約10年も前の国際がん研究機関はGDの構成成分グリシドールの有害性を「ヒトに対して発がん性の危険性あり(2A)」と分類した。国内では2003年の薬事・食品衛生審議会でGDだけではなくDGの大腸などでの発がん性情報を含め、追加試験の必要性の指摘があった。

 ドイツではすでに09年3月に最悪のケースを想定したリスク評価で、できるだけGDの混入を低くする装置を実施済みである。しかし、そのレベルは同成分が通常の植物精製油のレベル0.1~2.9ppmであるのに対して、エコナは何と約100倍も多く(!)、この事実を花王は頬かむりして黙り込んでいる。

 花王は厚生労働省・東京都・公正取引委員会から何回も注意を受けながらもそれを無視し、不満足な対応のまま今日に至っている。効果がない人たちにも「健康が気になる方」用語でうまく利用し、巻き込みながら販売量を広げて大儲けした、実にあくどい花王式商法である。

 今年もお中元で売りまくり、その直後には安売りまでして在庫の払底を図ってから、消費者の不安を理由に(すなわち消費者に責任を押し付ける形で)自粛という形にして、真に巧妙かつ杜撰な広告やニュースリリースなどで逃げ切ろうとしている。エコナ関連商品の売上げは当初の99年度で80億円、近年は200億円というから、この10年間で1000億円を超え、利益は数百億円に及ぶだろう。

 この10年間、人体実験をしていただいた消費者方に、どのようにしてこの巻き上げた膨大な利益を還元していただけるのでしょうか。

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【井口恒夫】退職後に調理師学校に入学して調理師免許を取得した経験を自費出版、1000部をほぼ完売。食品衛生の仕事に携わりながら地元町内会副会長としても活躍中