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りらいぶジャーナル

さだかでない記憶 セピア色のメモノートより

鈴木恒子著(日本文学館)1050円

 愛知県の奥三河地方は1000メートル級の山々が連なり、いく筋もの谷川が清流を作り、人々は自然と伝統を守りながら暮らす。この地方の神楽「花祭り」は民俗学的にも興味深い。

 筆者は奥三河出身で、そんな山の生活をほうふつさせる描写も鮮やかだ。山の中の実家にはシェイクスピアやダンテ、夏目漱石などの文学書があり、その本の力に触発されたのか、本を読んだり歌を詠んだりすることが好きだという。幼少のころの記憶、そして現在に至るまで、日々の暮らしと情景がときにしんみりと、ときに面白おかしく伝わってくるエッセー集。