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りらいぶジャーナル

日本近代漢文教育の系譜

石毛慎一著(湘南社)1890円

 特に専攻あるいは関心がない限り、漢文に触れる時間は一般的に中学・高校程度であろう。その教育現場で漢文という科目がどう扱われてきたのか、そしてその変化の要因と目的、関わった人物を探ることで、漢文教育に見られる教育思想を明らかにしようとする。

 筆者は国語と漢文との比を算出、すなわち「漢文購読」と「国語購読」の授業の総時間比を第一次資料に、他教科・科目に含まれている漢文を二次的資料として分類した。それを基に明治五年から昭和20年までを4期に分け、「漢文」を読み込んでいくのである。さらに、教科書、漢文教育を巡る論争、教育的思想を考察していくと、時代に翻弄された漢文が明らかになってくる。

 筆者は神奈川県立高校の教諭であり、これまでほとんど研究されてこなかった日本の近代漢文教育史に一歩踏み込むことになった書であろう。