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りらいぶジャーナル

《対談》 ロングステイトラブルを未然に防ぐには

――コロナの会がセブ島のロングステイ詐欺商法被害を提訴してちょうど1年。この問題はNHK「クローズアップ現代」でも放送され、高い視聴率だったようで、国民の大きな関心事になっています。
 古川さんは直接被害を受けているわけではありませんが、実際に問題が起きる温床について独自の考えをお持ちで、被害防止のためにマレーシア政府当局に対してもいろいろな働きかけをしてこられました。フィリピン、マレーシア両国とも日本人にロングステイを勧めているけれども、トラブルや高齢者の被害に対しては真剣に取り組んでくれない現状もあるようです。
 そのあたりの問題について、それぞれのご経験からお話をおうかがいできればと思いました。

協力的でない大使館内部に問題が

(写真=佐藤 恒氏。コロナの会会長。フィリピン・セブのロングステイ詐欺疑惑事件の原告代表)
佐藤 私たち「コロナの会」では、フィリピン大使館に対してもフィリピンに逃亡している責任者の追及の支援、こうした問題が発生した場合の相談窓口などの開設、それから現在フィリピン大使館に勤務している日本人が被告から金をもらっていたこと、さらに被告会社のパンフレットを配っていた事実について、責任を明らかにするように求めています。
(写真=フィリピン観光省に設置していた「あんしんの郷」リーフレット)

大使館でパンフレットを見せられて被害に遭った人もいます。そういう問題の責任も明らかにしないで、フィリピン政府が日本人高齢者にロングステイを勧めるのはいかがなものかと思います。

――古川さんがご存知のケースはどんなことですか。

古川 いろいろあります。ひとつは日本人が日本人を騙した事例です。もうひとつはビザなしで長期滞在している、いわゆる「Uターン組」と呼ばれる人たちの問題です。
(写真=古川作ニ氏。キャメロン会会長。マレーシア・キャメロンハイランドでロングステイするための交流団体代表(※当時))

 最初の例は、ある高齢者がキャメロンハイランドに行ったら、バス停に男がいて、ホテルまで坂道を10分くらい歩いていくのですが、それはきついからとその男が車で送りましょうと声をかけました。その後、一緒に食事をしているうちに意気投合したんですね。そこで、「よかったらアパートを借りませんか」と言われて、翌日すぐに借りたんです。すると今度は「アパートを買いませんか」と言われて、それですぐに決めてしまって、後日その男に現金で支払ったんです。ところが、それから何カ月経っても進展しない。住んではいるけれども、正式の契約の話がないわけです。ある人から「もしかしたら騙されているよ」と言われて調べたら、名義変更されていなかったんです。なぜばれなかったかというと、家賃は男が払っていたみたいですね。

佐藤 私たちのケースと似ています。首謀者は私たちには一括で支払わせて、実はローンで払っていた。それもすぐに払うのをやめていて、気づいたときは権利も何もなくなっていました。

Uターン組、不法滞在者に問題多発

古川 例えば長期滞在ビザを持たずに、3か月ごとに隣国のタイやシンガポールへ行ったり来たりしてマレーシアに居続けている日本人がいます。マレーシアの入管ではそういう人を「Uターン組」といいます。合法か違法か私たちにはわかりませんが、マレーシア政府は現在それをチェックしないので、無制限にUターンを繰り返している日本人がいます。それは明らかに不法滞在です。ワーキングビザを持っていないのに現地の不動産開発業者で働いている人もいます。彼も3か月ごとに行ったり来たり。それを見て真似をする人が現れる。何も知らない日本人にUターン滞在のやり方を教えたり、自身の小遣い稼ぎでバスツアーの商売を始めたりしています。これも違法行為です。旅行会社でもないのにバスツアーで事故に遭ったら誰が責任を取るんですか。マレーシアはとても交通事故が多いところなんです。

 私は6月14日(※2007年)にマレーシア大使館にノービザの許容滞在期間について質問状を出して、10月に正式に回答をもらいました。それは無制限のUターンは認めないという趣旨の内容でした(※詳細は対談下の記事に)。

――あとは現場でどれだけ周知徹底してもらえるかということですね。

古川 今度、現地で開く総会でこれらのリスクを紹介しようと思います。現状の法の運用ではこうなっていますと。よく法律の運用が変わりますから。

佐藤 我々は今、民事訴訟を起こしていますが、責任者の一人はまだフィリピンにいます。裁判所を通じて彼を探して呼び出しても応じない。「南フィリピン大学教授」であるとか平気で経歴詐称をする人物ですから、これから現地に行く日本人が同じような被害に遭う可能性が高い。それで日本大使館、フィリピン大使館にも協力をお願いしているのですが、動きは鈍いですね。特にフィリピン大使館は先に言ったように、内部スタッフに問題人物がいるものですから。

古川 私も悩んでいるんですよ。会のなかでも、年を取るうちに他人事にかかわっていられない、ハッピーであればいいじゃないか、自己責任というのが会にも大儀に書いてあると。自己責任はいいけど、自己責任を取れるだけの情報は共有しておくことが大事だと私は思いますね。


マレーシア入管
無制限入国に“NO”
古川氏の追及に文書で回答

 2007年10月、古川氏のもとにマレーシア出入国管理局から文書が届いた。「ビザと入国許可に関する規則」についての質問状に対し、4か月を経てようやくその回答が得られたのだ。

 マレーシアへの無査証入国は90日。だが、90日ごとに第三国との間で出入国を繰り返せばいつまでも滞在できると主張している滞在者は違法であり、それを許している入管にも問題があるのではないかとの古川氏の疑問に当局はこう答えている。

「日本人は合法的入国を証明できる限り、何回でもマレーシアに入国できる。ただ、タイやシンガポールなどに行ってマレーシアに戻る『Uターン入国』と当局がみなし、その入国を妥当とすればさらに90日間の一時滞在許可を発行する。しかし、3回目の入国ではマレーシア国外に猶予期間として少なくとも1か月は滞在する必要がある」

 ここではっきりと連続してのUターン入国はできないことが示された。今後、そのような不法滞在者への処分が課題となる。
(2007.12.30)