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りらいぶジャーナル

外国人介護労働者受け入れ 課題と解決法を指摘

海外就労アジア女性の現状から学ぶ


 NPO法人高齢社会をよくする女性の会は国際労働移動の推移・現状からアジアの女性が海外で介護労働に就労する場合の問題について考えるセミナーを開催、国際社会学の伊藤るり一橋大学教授(=写真)が講演した。

 伊藤氏はまず、アジアにおける移住家事・介護労働者の概況から、「介護労働者は『移住家事労働者』と区別されておらず、『ケア労働者』『再生産労働者』『移住家事介護労働者』などと呼んでいる」と説明。例えばフィリピン海外雇用庁(POEA)によると、海外契約労働者の職種には「ケアギバー・ケアテーカー」があり、全海外労働者の4.7%だが、「世帯関連労働者」のそれは29.7%で、そこには住み込み介護従事者が含まれていると説明、特に女性の占める割合が9割以上と相当数、海外で介護労働も行う女性労働者が多いことから、「外貨獲得にフィリピン女性が大きく関与している」と解説した。

 受入国別に見ると、香港で1990年以降、移住家事労働者が急増、特にインドネシア人が多くなっている。また、香港における送り出し、受け入れの際、斡旋業者が関与することから、「日本でも同様、民間業者が参入することは間違いない」と指摘した。
 インドネシア人が労働者として香港に入る場合、派遣業者や斡旋業者がかかわってくるが、借金を負わされる状態にあり、「女性が食い物にされる」状況にあることも紹介した。

 台湾においては、家事労働者の権利が疎かにされているため、労働法制定の運動が起きていると報告した。香港でも労働争議が起きているが、特にインドネシア女性は権利に関する訓練を受けていないため、フィリピン人から学ぶことが多いと説明した。

 このような海外労働の現状から、将来日本で介護労働者を受け入れた場合、「労働者としての権利、女性の権利についてPOEAにも研修が必要だが、日本の自治体レベルでの研修も重要」と権利に関する教育の必要性を説いた。また、受け入れ事業を行う国際厚生事業団について「誰がどのようにモニタリングするかを考えていない」と問題を提示した。さらに、「受け入れ側の意識改革が必要で、社会に迎えるという考え方をしなければならない」と主張した。

 「フィリピン人はすごろくのように、『香港に行き、次はカナダへ行き、自分はこうなっていく』という考え方をする。しかし、『日本に行ってこうなる』という部分がない。こちらから積極的にビジョンを描いて彼女らに近づくことが必要だ」とまとめた。

(2008.02.12)