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りらいぶジャーナル

日本語教育で多文化共生社会の実現を

■日本語教師 シニアへの期待■
日本語教育で多文化共生の実現を
東京中央日本語学院
学院長 白井義弘さん

――学校設立の経緯が特徴的ですね。
 東京中央日本語学院のスタートは国際交流から始まりました。私自身、外国人と交流する機会が多かったので、学校を作る前から多文化共生社会の実現の方法を模索していました。学生時代の少林寺拳法部の先輩がハワイ大学に勤めていたので、あるとき訪ねて行くと、その先輩から「ハワイでは日本語教育が盛ん」と聞きました。本校では毎秋、ハワイ大学でロコ(現地ハワイ人)と交流しながらの日本語教育研修を行っていますが、26年前のこの訪問がきっかけで今日まで続く恒例行事となったのです。

 そして1988年に日本語教師仲間を集めて学校を設立しました。「理論」「実技」「実習」という日本語教師養成の3本柱に、もう一つの柱「国際交流」が加わっているのが本校の特色です。

――校内の壁一面に開催したイベントのスナップ写真、教室にはイベントを案内する手書きのポスターがいくつも貼られています。
 授業のほかに外国人学生や日本語教師、教師養成講座の受講生らとの交流イベントをたくさん行っています。20年以上続くハワイ大学とオーストラリア・メルボルンの大学や高校での研修のほか、温泉旅行や林間学校、バーベキュー大会などです。イベント参加も単位として認めていますよ。

 こうしたイベントでもシニアが活躍しています。温泉に入りながら日本文化を教えたり、留学生を飽きさせない授業など、若い人には真似できない人付き合いができますね。

――養成講座の特徴は。
 養成講座は1クラス15人程度の少人数制です。各クラスに担任と副担任が付いており、受講生一人ひとりと向き合えるようにしています。シニアは若い人に比べるとどうしても新しいことを覚えるのに時間がかかってしまいますが、そうしたフォローも担任が行っています。ですから心配はいりません。何歳からでも始められます。

 実習は初級から上級まで10クラス、期間は2か月間。ハワイやオーストラリアでの海外研修は自由参加です。

――シニアが日本語教師をめざすことをどう見ていますか。
 最近は高度な知識や技術を持っている外国人学生が学びに来ていますから、そのような学生から学校や教師にそうした知識を求められることがあります。そこで社会経験の豊富なシニアがいれば知識を得ることができます。これは大事なことだと思いますね。また、シニアの方々は基礎学力を十分持っているので、教えるほうも楽です。

――シニア日本語教師に求めることは。
 日本語教師も最終的には人と人との付き合いです。お互いどう生きるかがテーマですが、外国人も同じ人間であると認識できれば、親近感を感じるコミュニケーションができる。そこが大事です。

 日本語クラスには50か国以上の国々から来日した外国人が在籍しています。なかには妻がパレスチナ人で夫がアメリカ海兵隊員というカップルがいます。この一例だけでも日本語学校には小さな地球があるのです。シニアの方々にもそういう現場を見て刺激を感じてほしい。ロングステイをするにしても、日本語教育のような技術を持って行きながら、その国での交流を通じて文化や習慣を知ってほしいと思います。
(2009.6.15)