少年の八月十五日
新城宏著(湘南社)1050円
表題のほか、本書には5つの短編小説が納められている。どれも著者自らの自伝的要素が極めて濃い。
「少年の八月十五日」は、子どもながらに戦意を高揚させていたにもかかわらず、敗戦という現実に直面し、さらに天皇陛下の玉音放送を聞いた少年の複雑な感慨が描かれ、あの戦争の意味を自問する。最後に収録された「遺影のつぶやき」は自分の葬儀を死者自らがレポートする形式を取りながら、葬儀という厳粛な場における人間模様や関係者の本音が描かれていて面白い。
他の短編も時代背景や世相を反映させたテーマが柱で、全編を通して読み終えると著者の生きざまが浮き彫りにされてくる。