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りらいぶジャーナル

日本の退職者、中国で受入れ

杭州IT企業で日本語教師

 中国で日本人リタイアメント世代の有能な人材を求める声が高まっている。急激な市場経済の拡大に対して中国国内企業の組織管理、人材育成分野の整備が遅れており、そこに日本の企業退職者の知識、経験を生かしたいというものだ。浙江省・杭州市にその実例を見た。


(写真=東忠人材学校では日本人講師による授業が行われている)
 「中国のシリコンバレー」と呼ばれる杭州市では、ソフトウェア開発企業の杭州東忠軟件有限公司(Hangzhou Totyu Soft Co.,Ltd)が自社でIT教育センターを設立し、日本向けソフトウェア開発専門教育に力を注いでいる。同教育センターでは浙江省内の理工系学部の優秀な卒業生に対して日本語教育を行い、即戦力としての人材育成に取り組んでいる。その日本語教育講師として日本の企業退職者の受入れを検討している。

 同社は2000年9月に設立された新興企業だが、06年には浙江省ソフトウェア協会の審査と推薦を受けて「中国品質協会品質技術一等賞」を受賞した。この賞は例年、ミサイル開発企業など軍需産業のトップクラスの巨大企業が受賞しており、同社は短期間でそうしたいわば生え抜きの企業群と肩を並べる中国でもトップクラスのソフトウェア開発企業に成長した。


(写真=東忠の堀池氏と陳総経理(右))
 「受講生は8カ月間の研修を受けます。卒業後も就職先での状況をフォローしているため、高い評価と信頼を得ています」(杭州東忠人材開発有限公司総経理・陳暁亮氏)
 即戦力となる人材を育てるために、教室は日本の会社内の仕事場の雰囲気を再現しているほど。

 「日常会話はもちろんですが、例えば日本の会社でのビジネスマナーから会議での議論の進め方など、長年会社で働いて得た経験を伝えてほしいのです」と話すのは同社の取締役品質最高責任者の堀池武史氏。
 「日系企業の杭州進出も盛んななか、東忠グループはその窓口的な役割を担っています。そうした企業向けの人材を育てるために、実務経験のある日本語教師が必要なのです」

(写真=急成長している杭州市)
 杭州は上海の南西150キロに位置し、07年1月に開業した新幹線なら1時間20分、成田空港から直行便で3時間20分の近さである。中国国内でも観光地として有名で、近年は日本人観光客の誘致に力を入れている。そうした環境を背景に、退職者がその経験と能力を生かして暮らすことができる新しい長期滞在先としての可能性が高まってきた。これまでにも東南アジア諸国ではいわゆるリタイアメントビザなどの長期滞在ビザを発行し、退職者の受入れに積極的に取り組んでいるが、それとは異なるアプローチといえる。

 現在中国では、日本の退職者の受入れについて関心が高まっており、杭州のほかにも吉林省、大連、西安、肇慶などの各地で動きが始まっている。それぞれの地域について長期滞在、就労などのビザ発行の可能性、滞在施設、現地サポート体制の状況などについて継続的にレポートしていきたい。
(2008.03.25)